学術レポート

第9回 高所トレーニング国際シンポジウム 2005 in 飛騨

高所トレーニングの施設とその利用-競泳の取組み

Facilities of high alutitude training and the use

岩原文彦(日本体育大学)

Fumihiko Iwahara (Nippon Sport Science Univ.)

これまで低圧低酸素環境下でのトレーニングについては、さまざまな研究がなされている。また、そこで得られた知見と実際のトレーニングによる経験から、高地トレーニングの目的別に高地滞在における標高や期間についての指針が示されている。高地トレーニング医・科学サポート研究班(日本体育協会)による報告では、ボルダー、メキシコシティー、コロラドスプリングス、昆明等の国外のトレーニング地や飛騨御嶽高原、飛騨チャオ御岳、霧が峰、菅平、蔵王坊平などの国内高所トレーニング地を適切な高所トレーニング候補地に挙げている。このように、近年、高所トレーニングキャンプ地は国内外に整備されてきた。この高所トレーニングキャンプ地は、陸上競技のようにトレーニングの場が舗装道路や林道などの自然の環境を利用して行える種目では、宿泊施設の確保ができれば比較的トレーニングキャンプ地として成立しやすい。しかし、上記で挙げられているキャンプ地の中には水泳場(スイミングプール)を持たない施設が大半であり、水泳競技のトレーニングには、「泳ぐ」ことが不可欠であるためトレーニングキャンプ地の選定には制限を受けてしまうことになる。更に、国内のキャンプ地は水泳場がないのが現状であるため、高地トレーニングを行うには海外に行かなければならない。そこで、高所トレーニング施設に望まれる環境を考えるとともに、水泳場という特殊な施設が必要な水泳競技の高所トレーニング地の選定例として日本水泳連盟の取組みにふれたいと思う。

高所トレーニング施設に望まれるものとは?

日本国土の3/4は、山岳地形に覆われていると言われているが、高地トレーニングとして至適な標高と言われている標高2,000m前後には、居住地域はほとんどない。よって、日本人アスリートの大半は日常のトレーニングを平地で行っており、高地トレーニング環境下でのトレーニングは非日常的な環境となるであろう。すなわち、日頃とは異なる環境の中でトレーニングすることとなるため、平地のトレーニング施設と比べ、特色ある施設が望まれることとなる。平地で行われるトレーニングキャンプと比べ、高所トレーニングキャンプ地の選定には、主に以下の4つの点に注意を払わなくてはならないだろう。

  1. 適切な標高
  2. 充実したトレーニング施設の完備
  3. 医療施設が近くにある
  4. 疲労回復に有効な施設の完備

1.適切な標高

標高が高すぎることによって酸素分子量が少なくなることによって、ミトコンドリア内の酵素活性が低下することやトレーニングによって行うことが出来る運動強度が低くなることによって筋への刺激が弱くなり、筋量が減少してしまうことなどが報告されている。また、その逆に、標高が低すぎれば高地で行うメリットが無くなってしまう。このことから、適切な標高は2,000m付近であるとされている。更に、近年はトレーニングの目的によりトレーニング地の標高を変えることも行っており、高強度のトレーニングを行う時はより標高の低い所で、また、より低酸素環境下での負荷をかけたい時にはより標高が高い所でのトレーニングが出来るよう、キャンプ地の近くに標高の違ったトレーニング地があることが更に望ましいといえる。

2.充実したトレーニング施設の完備

高所トレーニングは、従来、呼吸循環器系に対する効果を獲得する事を主眼におかれていたため、マラソン選手や長距離系の種目の選手のみ行われていた。そのため、キャンプ地にはその種目が出来るトレーニング施設さえあればよかった。しかし、近年、無酸素性能力へのトレーニング効果も認められるようになると、長距離景系種目だけではなく、短距離系種目も高所トレーニングを取り入れるようになった。実際、競泳のアテネオリンピック代表選手の20名の中で14名が高所トレーニングに参加し、100m種目に参加した選手は7名と半数が短距離系種目出場選手であった。この短距離系の選手達には、ウェイトトレーニングは欠かせないトレーニングメニューのひとつであるため、充実したウェイトトレーニング場が望まれるようになってきている。このように高地トレーニング参加者の変化とともに、要求されるトレーニング施設も変化してきている。

3.医療施設が近くにある

高所トレーニングは、日常のトレーニング環境よりも低い酸素分子量で行われることが多い。そのため、不慮の事故や体調不良を起こすことが多々ある。このような時に、できるだけ早く適切な判断を受け、処置を受けることが重要であり、その後のトレーニングスケジュールに影響を及ぼすことを最小限に抑えなくてはならない。それには、近くに医療施設があることは重要である。また、血液検査の実施など、医・科学的側面からのコンディションの把握なども行える機能を有することはとても重要な要素とまりうるであろう。

4.疲労回復に有効な施設の完備

高所トレーニングは、平地に比べて高い負荷をかけることができるとともに疲労からの回復が遅くなる。パフォーマンスの向上には、質の高い練習を如何に多く行うことができるかが大きなポイントとなる。効率的なトレーニングを行うためには、質の高いトレーニングを行った後の身体の疲労を速やかに回復させ、高強度な負荷のトレーニングメニューの頻度を上げることが重要となる。このような身体への疲労回復(怪我の予防も含む)に対する働きかけには、温泉浴やアイシングなどがある。そこで、トレーニング現場から近い場所に製氷機やジャグジー、マッサージ室があることが望まれるであろう。

NPO法人 高所トレーニング環境システム研究会 発行(2006年4月1日)
『第9回 高所トレーニング 国際シンポジウム 2005 in 飛騨 総集編』より
※ http://www.takenaka.co.jp/highplace/07/07.html

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